Baku Hashimoto

工事中

『ヴァナキュラー・ウェブ』試訳の一部です。Olia Lialinaによる原文はこちら.



「工事中」標識は、初期ウェブを象徴する強力なアイコンだ。これらを目にすると、「情報ハイウェイ」の建設を科学者やエンジニアたちが終えた直後の輝かしい時代のことを思い出す。そこでは、市井の人びとが自前の道具を持ち寄って、自分の道や交差点をせっせと作っていた。どこもかしこも工事が行われていて、準備中のものだらけ。リンクはよく切れていたし、仮につながっていても空のページだったりした。リンク切れや不十分なナビゲーションに注意を促すサインがそこかしこにあった。

そうやって少しずつ、人びとは自分のページを「ちゃんと動くウェブ」へと育てていって、やがてわざわざ警告を出す必要もなくなっていった。特に、道路標識のような形で情報不足を伝えることは減っていった。でも、それで「工事中」画像が消えたわけじゃない。それは警告から、ページの拡充を約束するものへと意味を変えていった。言ってみれば、言い訳と招待状のハイブリッドだ。中身が空っぽのページにも、ちゃんと機能するサイトにも登場して、「このプロジェクトはまだ成長し、更新されていきます」というサインとして使われるようになった。そのうち「いつも工事中(Always Under Construction)」なんて、新手のサインまで現れるようになった。

「いつも工事中」という言葉は、このサイトは永遠に完成しないという意味ではなく、むしろその逆だ。誰かがちゃんとこのサイトの面倒を見ているから、また来たときにも何か面白いものがあるかもしれない、という合図だった。

ウェブは常に変化して発展していくものだという考えを強調するという点で、これはとても重要なメッセージだった。でも、あの標識自体は良くなかった。「壊れた道」や「通行止め」みたいなイメージは、継続的な発展とはまったくかみ合ってなかった。1997年ごろになると、「工事中」標識はただの意味のないフッターになって、冗談のネタとして消費されるようになった。ついには大手メディアまで「ウェブは常に工事中」なんて言い出したから、どこにでも貼るのを皆やめてしまった。


ところで、これらのバナーは、(W3Cコンソーシアムの言葉を借りれば)「相互運用性のあるウェブページをきちんと作ったことを読者に示す」ためのバナーだ。言い換えれば、このサイトの開発者はウェブを新標準に合わせて作り直し、「世界最大のゴミ山」を、エラーのないクリーンで明快なコード環境へと変えようとしている、という意思表示だ。

わたしはこうした流れ自体にはそこまで賛同はしない。でも、XHTMLバナーの見た目はけっこう好きだ。あれには、エンドユーザーが開発者であることの強み1がしっかりと示されているし、自分自身のサイトをつくることが、ウェブ全体の(再)構築への関与でもあるんだという前向きな意思が可視化されていると思う。

『ヴァナキュラー・ウェブ』試訳 目次

  1. 土着民と蛮族たち
  2. 工事中
  3. 星空の背景画像
  4. 無料ウェブ素材集
  5. リンク
  6. MIDI
  7. フレーム
  8. チルダ
  9. 〇〇のホームページへようこそ
  10. メールはこちら
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