Baku Hashimoto

チルダ

『ヴァナキュラー・ウェブ』試訳の一部です。Olia Lialinaによる原文はこちら.

よく知られているように、マルチユーザーのUnixマシンでは「~」は「/users」ディレクトリへのショートカットとして使われており、当初はすべてのユーザーが同じ立場だった。名前やニックネームの前に置かれたチルダは、マシンやシステムの権限を示すものであった。あなたはユーザー、そしてゲストであり、周縁的な存在で、あなたはチルダよりも下位のコンテンツだけを所有していた。チルダよりも上位にあるものに対して、何の影響も及ぼせなかった。

チルダはある種の階層構造を象徴していたし、ユーザーとインターネットとの関係を可視化していた。URLをひと目見れば、自分にアクセス権を与えてくれたプロバイダや大学、機関が分かった。だからこそ、チルダを取り去ることは重大なことだった。

1997年、わたしはモスクワのデザインスタジオで働いていた。給料やその他いくつかの条件(たとえば無料のインターネット接続)に加えて、会社は、わたしのファイルを、名前の前にチルダがつかない形で会社サーバーでホストしてくれると約束してくれた。

1年間 www.cityline.ru/~olialia だったわたしのURLは、design.ru/olialia になった。チルダが消え、私はチームの一員になった。チルダをなくすと、その前にある単語との関係はもうはっきりしなくなる。

当時のインターネットユーザーにとっての第二のステップ(今では最初のステップだけど)は、自分の名前を独自ドメインとして登録することだった。技術的には相変わらずサーバー上のいちユーザーであり、権限も特定のフォルダの範囲に収まっているのだが、見た目は違う。「ニックネーム」は、より高レベルのDNSという仕組みによって認証された本当の「名前」になるのだ。

それに、独自ドメインはビジネスの成功を約束するものでもあった。

今では、名前の前にチルダがつくのは特にやっかいだ。なぜならAppleのキーボードにはチルダがなく、「~」を入力するには、AltキーとNキーを同時に押し、離してからスペースバーを押さなければならないからだ。脚注1この「裏技」を知っている人ですら、覚えていないことが多い。この手間が、古風なチルダを、禁断の果実のようにミステリアスで甘美なものにしている。そしてやがて、チルダはクールで有能であることの印として再び戻ってくるのかもしれない。

実のところ、本当にイケてる人たちはチルダを手放さなかった。

http://www.well.com/~cuba/
http://www.zi.biologie.uni-muenchen.de/~franke/
http://a-blast.org/~drx/

わたしは、共著者で、このリストの最後の人物にこう尋ねた。「自分のサーバーなのに、どうして a-blast.org の後にチルダを付けるの?」 その答えは「チルダは、私がサーバーコンピューター上の一ユーザーであることを示している。自分とサーバーとの所属関係を明示するのは、自分自身の立ち位置や出自を語っているようなものだと思う。実のところ、URLには面白い関係性を持たせられる。プロジェクトサーバー上の個人ページ、コミュニティの中の一人、友達の友達であること。こうした関係性はURLを“読める”人には伝わるわけで、だから私はできる限り興味深い情報を含めるようにしている。そしてチルダの後にある単語は私のログイン名だ。つまり、自分がログインしたり、FTPやSSH、rsyncだとかを扱える技能があるってことを暗に示している。」

お分かりだろうか。今ではこの「ユーザー」を指し示す記号は、単なる一般ユーザー以上のスキルの持ち主であることの証明にもなり得る。

脚注1:すべてのAppleデバイスがそういうわけじゃなかったみたいだけど

サイモン・ビッグスがこう書いている:

ちょっとした訂正ですが、Appleコンピューターにもチルダ(~)はありますよ。ほら、G4ラップトップで打てました! 英語配列のマシンでは、キーボード左下の ` の上に、Shiftキー入力できる文字として印字されています。

『ヴァナキュラー・ウェブ』試訳 目次

  1. 土着民と蛮族たち
  2. 工事中
  3. 星空の背景画像
  4. 無料ウェブ素材集
  5. リンク
  6. MIDI
  7. フレーム
  8. チルダ
  9. 〇〇のホームページへようこそ
  10. メールはこちら
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