橋本 麦∿Baku Hashimoto

おいしいゲルを増やす

最近、ヨーグルトを増やすのが楽しい。年末に母から貰った種菌を、煮沸消毒したタッパーに牛乳と入れて冷蔵庫の上に放置すると、一日後にはぷるんぷるんになっている。「キッチンで増やせる食べ物」の代表格である豆苗とも違うのは、ヨーグルトは生き物というより物質に近いということで、それを特徴づけるのは全体の造形というより「白くてブルブルして酸っぱい」という物性だ。西洋菓子よりおもちの方がかわいいという僕の好みにも近いところがある。視覚的にかわいく感じるよう、だれかの作為でもって形どられているよりも、感触、舌触り、匂いのある種のバランスに、どういうわけかかわいさを感じ得てしまう方に惹かれてしまうのだ。ヨーグルトはその点、おもち以上に抽象度の高いかわいさを孕んでいるように感じられて、この情感は掘っていくと中々面白くなりそうだと最近気になっている。

自己複製能をもったおいしいゲルを日々愛でる楽しさは、実は色んな発酵文化を下支えしてきたのかもしれない。ぬか床を育てるおばあちゃんの気持ちもこれに近しいのかなと想像してみたり。ぬか床の風味は混ぜる手の常在菌にも影響されるらしく、文字通り「おふくろの味」を培養してることになる。ヨーグルトにそこまでの複雑さは無いのかもしれないが、何かを醸す楽しさをお手軽に味わえる、なかなか良い日課を見つけられたなぁとうれしくなった。