微分量のアニメーション
https://www.youtube.com/watch?v=6aBBHjqAc4Y
上記は、速度をグラフで入力することのできるUIのデモ動画です。
なんらかの量をアニメーションさせるとき、実際にユーザーが直接入力する量が、元の量そのものか、その量の変化の速度か、あるいは加速度かによって、動かし方を分類することができます。
ゲームにおける自機の位置入力を例にあげて考えてみます。
- Pong でツマミが操作しているのは位置
- スーパーマリオ 64 で 3D スティックが操作しているのは速度
- コロコロカービィで、ゲームボーイを傾けることによって操作しているのは加速度
- ※ 世代を感じさせないたとえ話を募集中
映像制作についても考えてみましょう。手描きアニメやキーフレームアニメーションは、位置の推移を絶対指定してしていくことで動きを与えます。コマ撮りやクレイアニメは、フレーム間の変化量、つまり速度分対象物をずらしたり変形させることで、その時間積分が動きとなります。実写撮影だと、慣性が強く働くものを身体で動かす時は加速度をアニメーションさせていると言えます。ドリーを操作する際は、手で力(=加速度)を加えることで加減速させます。ジブなんかもそうです。手持ちやステディでカメラを動かす際も、原理的には加速度を操作しているということになるのですが、重力と合成されるので少し分かりづらいかもしれません。
この考えに、3D ソフト上で実写らしいカメラワークをつけようにも、どこかぎこちなさが残るのは、アニメーションさせている物理量の次元からして違うからだと説明がつきます。
そもそも多くの映像ソフトが、速度や加速度に対してキーフレームを打つことを許さない設計となっているのは、現在の状態を求めるためにフレーム 0 から順繰りに計算しないといけなくなるからです。それでは時間を前後させながら編集したり、レンダリングを並列化するには不都合です。またユーザーにとっては、変化量をアニメーションさせるのでは、動きの終点を厳密に定めることができないという問題があります。そのために、After Effects の速度カーブは、厳密には速度にキーフレームを打っているのではなく、 2 つの固定されたキーフレーム間の速度の配分(=イージング)のみ設定する仕組みとなっています。
アニメーターやモーションデザイナーのような、「動き」について考える人達の多くが、パラメーターの変化量ではなく、実は絶対量の推移を書き込んで動きを設計していることになります。それは先に挙げたようなソフトウェア側の都合でもありますし、一度紙に描いた線を指でこすってずらせないように、そのメディアが持つ物性によるものだったりもするので、良し悪しの話とはまた別なのですが。
「ここでシュン!っとなる」の「シュン!」は、実際には速度のピークを表しています。そして、そのタメツメ感覚を紙やアニメーションカーブ上に再現するときには、一旦頭の中で時間積分し、位置に置き換える必要があります。そしてそのワンクッションは、人の身体感覚からすると不自然なことなのかもしれません。跳ねるゴムボールをパラパラマンガに描くことすらとても難しく、アニメーターには鍛錬が必要なのも、本質的にはそうした動かす物理量の違いに由来する反直感性にあるといえます。