橋本 Hashimoto   Baku

橋本 Hashimoto   Baku

第二種電気工事士を取得した

制作をしていると、より低レイヤーの事柄を理解しないからにはこのまま手を動かし続けるわけにはいかないという強迫観念に駆られることがあります。とはいっても、これまではツールのSDK、あるいはOpenGLなど、まぁ勉強しといて損は無いかなという程度の穏当なものでした。しかし今年の頭、電子工作をしていたときにふと「100V電源を扱えないからには映像作家としてネクストレベルにいけない」という考えが頭をよぎって以来、いてもたっても居られなくなったので、一般用(家庭用)電気工作物の配線や作製に合法的に従事するための資格である第二種電気工事士を取得することにしました。その辺、若干パラノイアの気があります。

誰かの参考になればと、特に工業系のバックグラウンドもない自分がどう試験対策したかを簡単にメモしておきます。ちなみに電気工事士試験の大まかな流れを知っていることを前提に書いています。また、以下はあくまでぼく個人の経験談ですので、参考程度に留めておいて頂けたらと思います。

筆記試験

4択のマークシートですが、AT車普通免許やセンター試験よりも簡単かなと思います。筆記試験については以下の本やチャンネルを参考に。久々のペーパーテストでアガったので、満点目指して2週間前からコツコツ勉強してました。自己採点で48/50点だったのでダサいですが。実際、合格ラインは30点なので、自信があれば3夜漬けくらいでも間に合うのではないかと思います。

  • DVDで一発合格! 第二種電気工事士
    • Kindle Unlimitedにあります。何ならこれだけで済むかも。筆記だけをまず対策するのではなく、一度筆記・実技まで何が問われるのか通読しておくのがオススメです。筆記対策をするにも、実技にも使える箇所(複線図やリングスリーブ圧着の使い分けなど)を重点的に覚えることができます。後述のYouTubeチャンネルを見ていたので、DVDは未視聴です。
  • いちばんやさしい 第二種電気工事士
    • 筆記試験に絞るなら、こちらの方がデザインが目に優しく読みやすいです。
  • 日本エネルギー管理センター事務局
    • 予備校的なテクニック(語呂合わせなど)がわかりやすく解説されています。長風呂しながら倍速視聴していました。

実技試験

候補問題13問を一周すれば十分かと思います。日本エネルギー管理センターの作業解説を観ながら、同時に手を動かす感じで練習しました。高をくくって試験前日に対策し始めたので、1問あたり大急ぎで35分、朝から深夜まで練習するはめになりました。最低でも2人日分確保するのをオススメします。

ホーザンさんを中心に、試験対策セットは発売されているのですが、工具部材を真面目に買い揃えると5万近くするのでアホいです。ぼくは以下のものを個別に買い揃えました。(価格は2022/12/27現在)

PHドライバー No.2、マイナスドライバー 5.5、ペンチ(刃の厚みが約12mmのJIS規格品)、工具箱については手持ちのものを使いました。布尺はVVFストリッパーの幅(約22cm)と目盛りで代用可能です。合格クリップはあるほうが楽かもしれません。リングスリーブに電線を4本綺麗に挿入するのは案外至難の業です。

そのほか、試験中や練習で役に立ったtipsです。

マスキングテープで端材入れを机の端に留めておく

大学の講義室の狭い長机で作業するため、少しでも作業空間を確保するのにオススメです。端材入れ袋は配布部材に含まれていました。

作業用手袋に慣れておく

適当なワークマンの手袋を使いましたが、練習時からジャストサイズの手袋で作業するのに慣れておいた方が良いです。電線や連用取付枠など、意外と鋭利で手を怪我しやすいので。

複線図を書かない

意外と時間が無いです。ぼくの試験会場ではたまたま手数が多い問題にあたったので、終わってない受験者も多かった印象があります。ですから、単線図から頭の中で複線図を起こせる程度に配線に慣れておくのが吉です。日本エネルギー管理センターの作業解説もこの方針でした。

作業課題を問題用紙から透かして見る

試験開始前に、問題用紙の配布と部材確認の時間があるのですが、この時点でどの候補問題が出されるか大体予想できます。また、問題用紙から単線図が普通に透けて見えるので、作業手順をイメージしておくと心に余裕を持てます。

数問練習して慣れた部材はケーブルを取り付けたまま配線する

候補問題を少しでも早くこなすには、引掛シーリングやランプレセプタクルなど、頻出する部材に取り付けたケーブルはそのままに、配線のざっくりとした流れだけを追うに留めました。個人的にはこれで十分練習になった気がします。そもそも、一夜漬けで対策したぼくが悪いのですが。慣れれば、作業解説動画を観ながら30分で1問こなせました。


せいぜい自宅の埋め込みコンセントやダウンライトの交換をしたい程度なのに、ブレーカーや三相交流について勉強するのはアホくさいという気持ちも無きにしもあらずでしたが、低圧電源の扱いについて包括的に学ぶことができて、結果良かったと思います。APIやツールの仕様のように、暗記より必要に応じて都度逆引きするほうが理にかなっているケースに慣れていたのも不服な気持ちの一因だった気がします。しかし電気工事のように、その欠陥が重大事故につながるような責任ある作業について「何を知っておくべきか」を確実に知るのは限界があります。そのような分野においては、関連分野を洗いざらい頭に詰め込まされる資格取得のプロセスは依然として有効なのかもしれません。雰囲気でコンセントの交換とかしなくて本当に良かった。

また、実技試験の課題が完成していない方が思ったより多かったのが妙にショックでした。運転免許以上にセンスの要らない「月並みに対策すれば誰でもこなせる」ものだと思っていたので、実技試験終了後、時間に間に合わなかった以前にただ手つかずの配線を横目に見て、なにか胸に来るものがありました。中学卒業以来、何だかんだフィルターバブルの内側の狭い人間関係にぼくは生きてきたのかもしれない、と。こんな書き方も上から目線に感じられて気持ち悪いなぁ…と自分でも思うのですが、自分と少なからず近しい領域で活動されながらこのメモに辿り着いた方は、どこか似たような感想を抱くような気がします。

受験料や諸々の部材をまとめて計算したところ、¥37,000ほどで取得できたことがわかりました。試験当日込みで7人日ほど費やしたでしょうか。もっと要領良く勉強できる方は居らっしゃいそうです。更新も要らず国内では一生使える資格なので、時間にゆとりのある方は是非。