ACC_gi_KD (メモ)
このページは個人的なメモ書きです。何かあればご連絡ください。
2024 64th ACC Tokyo Creativity Awardsのデザイン部門の応募のための資料。
審査員長 - 川村 真司
BLIEF
group_inouの楽曲「HAPPENING」のインタラクティブミュージックビデオ。ディレクションとアニメーションはAC部、インタラクションデザインは映像作家の橋本麦が担当した。ウェブトゥーンと呼ばれる縦長漫画に、GIFアニメやリリックビデオ表現を掛け合わせ、楽曲の歌詞を忠実にコミカライズ。電子書籍アプリ「Kindle」を模したWeb版では、ユーザーが自由にスクロールしたりスクラッチできる。
SOLUTION
本プロジェクトでは、インタラクティブアク品のアーカイブ性の低さや批評文化の欠如といった課題にも取り組んだ。永続性を重視した技術選定のもと、YouTubeやiOSといった特定のプラットフォームに依存せずにアプリを構成している。作品公開後にはメイキングやソースコード、インタラクティブMVにまつわるリサーチを公開。Webデザインシーン内外に議論を投げかけた。
RESULT
group_inouのプロジェクトの中では初となる英語・日本語の多言語展開を行い、国内外の潜在的なファンへのリーチも目指した。Webアプリ以外にも、屋外ビジョンやライブ演出など様々なメディアに展開され、プロモーションとして高い費用対効果を達成した
- 『作品名』 - group_inou / HAPPENING
- 『商品名』 - group_inou / HAPPENING
group_inou(グループ・イノウ)とAC部によるミュージック・ビデオ作品。ウェブトゥーンと呼ばれる縦長スクロール漫画にGIFアニメやリリックビデオ表現を掛け合わせ、アーティストの楽曲や歌詞に「忠実」にコミカライズした。動画としての公開の他、Webアプリ化や屋外ビジョンなど、様々なメディアで展開された。
本プロジェクトは、2016年以降活動を休止していたgroup_inouの7年振りのシングル『HAPPENING』のプロモーションとして制作された。一過性の広告にとどまらず、アーティスト自身の作品として残り続けるために、インタラクティブ表現を用いながらも、永続性の高いWeb技術や、トレンドとは距離を置いたルック & フィールを用いている。また彼らのプロジェクトの中では初となる英語と日本語の多言語展開を行い、国内外の潜在的なファンへのリーチも目指した。
group_inouの活動再開を祝して、彼らの長年の友人であり共同制作者であるアニメーション制作ユニットのAC部、映像作家の橋本麦による三者のコラボレーションとして始まった。アーティストを含めてわずか5人というチームながらも、ディレクションと実制作をそれぞれが兼任し、2ヶ月という短期間で映像・Webアプリの2作品を完成させた。インディー・レーベルによるプロモーションという予算制約のある条件ではあったが、「制作会社」「代理店」といった枠組みに囚われない、アーティスト個人間の密な共同制作によって、高い費用対効果を達成した。
group_inouは自身のレーベル〈GAL〉を運営し、国内外の音楽フェスへの出演や、TV番組へのタイアップなどオーバーグラウンドでも活躍する他、その音楽性はバンドシーンやクラブカルチャー、ネットレーベルの垣根を超えて注目され続けているアーティストだ。AC部は、日本の最高峰のアートカレッジで伝統的なデザイン教育を受けながも、意図的なアマチュアリズムを追求するクリエイティブ・チームである。彼らは広告領域に加えて、近年は現代美術にもその活動の幅を広げている。橋本麦は映像作家でありながら、視覚文化とテクノロジー両面への深い造詣のもと様々な表現手法を探求している映像作家である。そうしたインデペンデントで学際的な領域で活動を続ける制作者達の交流が、本プロジェクトに結実した。
本プロジェクトでは、表現としてのユニークさに加え、ニュー・メディア表現が持つ課題にも挑戦している。2000年から2010年代前半にかけて、FlashやWeb技術を用いたインタラクティブ広告が一斉を風靡したが、残念ながらその多くが基盤技術の変化により短期間で閲覧不可能となっている。MVを電子書籍化したWebアプリ『Kindolphin』では、技術的な永続性を重視し、特定のプラットフォームに依存しないWeb標準技術のみを用いて構成した。またメイキングや実装のためのソースコードをオープンにし、広告文化における健忘性やアーカイブの問題においても議論を投げかけている。
広告という概念やその制作体制が多義化する現在において、エントリー情報の「商品名」「広告主」「広告会社」「制作会社」といったカテゴリーは従来の広告業界における商習慣を前提とし過ぎているようにも感じました。ACCへの応募作品の幅を広げていくためにも、次回度以降再考をお勧めいたします。
また以下は、本プロジェクトに関連して公開されたドキュメントです。