究極の登校 制作メモ
高校時代つくった(フェイク)ドキュメンタリー番組「究極の登校」について、当時放送部のWebサイトでメイキング記事のようなものを書いていたので、ほぼそのままの形で転載します。
「究極の登校」のつくりかた( 2010年8月6日)
※ 2018年1月時点で、既に閲覧できない状態
今更という気もするのですが、制作ごとにしっかりドキュメンテーションを取るという個人的な習慣は、遡るとこれが最初でした。7年半経って読み返すと、考えの拙さに恥ずかしくなります。「気持ちカッコイイから16:9にした」は、「無意味にシネスコにしてみる」に形を変えて業界に蔓延しているので笑えますが。いずれにせよ、いつか何かの機会に参照したくなる時が来るはずなので、元サイトが落ちないうちに残しておきます。
余談ですが、出品した大会であるNHK放送コンテストでは、当時インターネット上の素材を番組中に使うことを無条件に禁止していました。BGMとしてKevin McLeod氏のWebサイトで公開されている音源を使うため、彼が採用していたCreative Commonsライセンスや、著作権について高校生なりに勉強し、運営側を説得しようとしていたのを覚えています。結局、CCライセンスを認めるかは言及されないまま、なぁなぁに良しとされたのですが、フリーカルチャー運動について興味を持つきっかけにもなりました。
また、このテキストに関連して、同サイトに「「究極の登校」最優秀賞受賞に関して思うこと」という記事も書き残しています。
以下本文。
前回のエントリで最後にする予定でしたが…。色んな人たちから「どうやって作ったの?」という質問を頂いたので、メールで毎度やりとりするのも効率が悪いっけ全部載せたいと思います! 思いっきし専門的な話ですが…。
CGパートの作り方
一番質問が多かったので。つのソフトを使用しました。
- AfterEffects CS4 (AE)
- CINEMA 4D
- voodoo camera tracker
タイトル、図説アニメ、EDシーケンスはAEを使用しました。
タイトルは実写をAEで加工してます。図説アニメーションは全てAfterEffectsです。 人ごみは撮影した素材を重ねました。
- タイトル: 実写映像をAEで加工
- 図説アニメ: 地図のみIllustratorで作成、動きはAEで
- エンディング: 定点カメラで撮った横断歩道の映像をAEで重ねまくる
おおよそ1シーン2時間から4時間かかります。
そして信号機が実写の地図上に出てくるシーン
これは難しかったし、自分でも初挑戦でした。
マッチムーブ、という手法を使います。実写にCGを上手く合成するには、CGソフト内のカメラも実際のカメラと同じように動かなくてはいけません。そこで実写映像の特徴点の移動の様子からカメラの動きをパソコン上に再現してくれる優れものがマッチムーブです。
- カメラの動きをマッチムーブソフトで検出
- 3DCG作成ソフトにインポート、信号機や車、矢印を作成
- 実写とCGをAEで合成、指などの上にCGが出てこないようにその部分だけ消していく
こんな流れです。
AfterEffectsは結構多くの放送局にあるようですし、 マッチムーブに使用したvoodoo camera trackerというソフトは無料です。CINEMA 4Dは最近になって、高校生向けに無料で配布が始まったそうなので、どれも局費をかけずに集められます!
高校生なりに映像を映えさせるには
どうやったら映える映像ができるか、という質問もありました。自分達なりに体得した事を箇条書きにしたいと思います。
まずは模倣
“オリジナルは模倣から”です。プロの映像はどこががいいのか、感覚的にでは無く具体的に述べられる位に観察します。逆に悪い意味での高校生臭さってあると思います。そこは出来るだけ避けるようにしてきました。具体的な話で言うと:
- テロップは気持ち小さめに。無駄な色づけや装飾、ダサい丸ゴシックは避ける
- コントラストや彩度を高めに設定すると気持ち画面が引き締まる
- (ドラマでは特に)黒をレベル補正で濃くだしてやると良い
- 16:9にするだけでも気持ちカッコ良く見える
- ホワイトバランス合わせず撮った感じの生温い画(高校生にありがち)は避ける
- 番組を通してモチーフとなるデザインや言葉を決める
6ですが、今回は「明朝体、白と黒、製図、アナログ、青白い」を基調にしました。深川東さんはモチーフというかテロップのデザインの設定が素晴らしいと思います。さらに裏話をすれば、番組そのものも元ネタがありまして…。「特命リサーチ200X」という番組と「jam Films2 机上の空論」という短編映画です。パクリ? いや、オマージュです(と自分に暗示)
コンテや構成をしっかり練る
写真コンテまではいりませんが、ドラマ部分での撮影をスムーズにする為にも、絵コンテは必要でした。文字コンテだと、カメラと監督が別の時に意思疎通が出来なくて困ります。また、構成ですが、ポストイットを有効活用しました。今まで分かった事実を書き付けて、それを自由に並べたりくっつけたり。巨大なホワイトボードでやると皆の意見も活発になりました。
ちなみに絵コンテ(カット割)は、僕はアニメの絵コンテ(サマーウォーズです笑)を参考にしました。というのも、映画ではドリーやクレーン等が多用され過ぎていて、高校生の機材じゃ全く真似しようにも歯が立たないからです。アニメはFIXかPANのショットが中心ですし、背景を使い回す為に「同ポジ(=同じ構図を使う)」が多いので、カット事にいちいちカメラを移動させるのではなく少ない構図の中でいかに効果的に画を繋いでいくかが学べると思います。
普段から映像を作る
やっぱりこれに尽きると思います。活動内容のページにもありますが、僕達は行事関係の仕事が多く、Nコンに向けて使える期間が3ヶ月しかありません。逆に言えば大会以外で映像のセンスや技術を培う場が多い訳です(究極のプラス思考笑)行事ではコマ撮りアニメだったりバリバリのモーショングラフィックスを作る機会もあるので、そういった番組づくりとは違った経験がやっぱり必要だと思いました。
いや、ここまで書くつもりは無かったんですが、ついつい…。けど思うのは、やっぱり必要なのは技術でもなくセンスです!で、センスは平等に備わっている訳ではないですが、磨けます。努力次第で。ホントです。それも、ただ漠然としていては駄目。抽象的な「センスの良さ」をそのまま捉えるのではなく、具体的にどうすれば「センスの良さ」が出てくるのか、これは上手い人の映像をコマ送りにでも研究するしかありませんでした。あくまでも僕個人の経験談ですが…。
観てくれる人もそういないとは思いますが、少しでも参考になればと思います。
長文失礼致しました。