人生訓より経験知
クリエイターのインタビューやトークイベントに思うのは、ワーキングスタイルとか、キャリア観とか、そういう話をしすぎなんじゃないの?ってことだ。
たしかにそういう一般的な話って、門外漢には分かりやすいし、イベントとしても開かれたものにしやすい。だけど、実際にものを作っている側が本当に聞きたいのは、もっと別のところなんじゃないか。つまり、その人が実際に手を動かしていたとき、何を見て、どこで迷って、何を良しとしていたのかという、細かすぎてほとんど伝わらないような話である。
もちろん、門戸を広くしておきたい事情も分かる。話す側だって、技術屋じみた細部をだらしなくシュバるより、思想とか態度とか、そういう抽象度の高い話をしたほうが気持ちいいんだと思う。いや、これは少し意地悪な言い方かもしれない。でも、頭から終わりまでフワッとした概念の話だけをされるより、具体的な例をいくつも積み上げながら、そこから抽象的な考え方を帰納的に理解させてくれる話し方のほうが、その人の制作観はずっとよく伝わる気がする。
それは、仮にあまりにも独特な感性に基づいていたり、専門的すぎてぼくには半分も理解できなかったとしても、である。むしろ、よく分からないからこそ、この人は自分にはまだ見えていない解像感で世界や制作を捉えているんだな、と圧倒されることがある。中学や高校のころ、ぼくがインタビューを読んで感化されていたのも、そういう瞬間だった。
つまりは、立派な理念や人生訓を聞きたいわけではないということ。その人にしか見えていない細部の話が聞きたいのだ。話を聞いたあとに「ためになった」で終わるのではなく、「この人、何かとんでもない精度で物を見ているな」とブチのめされたい。個人的にはそういう語りのほうにこそ惹かれる。