Baku Hashimoto

橋本 麦

「動かし方」の分類

なにかを動かす時、操作する物理量が何回微分されたものか — 具体的には位置/速度/加速度のどれをアニメーションさせるのかによって「動かし方」を分類できるのではないかとこの数年考えています。

ゲーム内での自機の移動を例にとると分かりやすくて。Pongでツマミが操作しているのは位置。スーパーマリオ64で3Dスティックが操作しているのは速度。アーケードレースゲームでアクセルとブレーキが操作しているのは加速度。

映像制作の中で「動き」について考えるときも、この分類はなかなか有効だと思う。手描きアニメや、キーフレームアニメーションは位置の推移をプロットしていくことで動かすし、ストップモーションやクレイアニメは、フレーム間の変化量(速度)だけ対象物をずらしたり変形させることで動きを与えていく。アニメだって頭の中で「速さ」とか「タメ/ツメ」をイメージしながら描くじゃないか、と一瞬思うけれども、結局紙の上に残していくのはあくまでもそのコマにおけるキャラクターの位置。

実写撮影だと、慣性が強く働くものを身体で動かす際には加速度を操作することが多い。ドリーを手押しする時は、台車に力(≡加速度)を与えることで加速/減速させる。ジブもそう。手持ちやステディでカメラを動かす時も、基本的には加速度を操作していることになるのだけど、重力との合力になるので少しわかりづらい…

そういう風に考えれば、3Dソフト上で実写らしいカメラワークをつけようにも、どこかぎこちなさが残るのは、アニメーションさせている物理量の次元が違うからだと説明がつく。

そもそも多くの映像ソフトが、速度や加速度に対してキーフレームを打つことを許さないのは(パーティクル系のような例外はあるけれど)、現在の状態をフレーム0から漸化的に計算しないといけなくなるからで、時間を前後させながら編集したり、並列処理させるには不都合だからだったりする。またユーザーにとっては、変化量をアニメーションさせては動きの終点を厳密に設定できないという問題もあって。そのために、AfterEffectsの速度カーブなんかは2つの固定されたキーフレーム間の速度の配分のみ編集できる仕組みになっている。

アニメーターやモーションデザイナーのような、「動き」について考える人達の多くが、パラメーターの変化量ではなく、実は絶対量の推移を描いて(打ち込んで)動きを設計していることになる。それは先に挙げたようなソフトウェア側の都合でもあるし、一度紙に描いた線を指でこすってずらせないように、そのメディアが持つ物性によるものだったりもするので、良し悪しの話とはまた別なのだけど。考えてみれば「動き」という概念自体、文字通り変化量のことなので、そこにちょっとした矛盾も感じる。

「ここでシュン!っとなる」の「シュン!」は速度のピークを表しているのだけども、それを実際に紙やアニメーションカーブ上に再現するときには、一旦頭の中で積分して位置に置き換えてやらなくてはいけない。現実でものを動かす時、摩擦で慣性が働きづらいものには速度を、滑ったり転がったりするものには加速度を力として与えることになるので、そのワンクッションは、人の身体感覚からすると不自然なことなのかもしれなくて。パラパラマンガで跳ねるゴムボールを描くことすらとても難しく、アニメーターには鍛錬が必要なのも、本質的にはその部分の違いに由来する反直感性にある気がする。

この1、2年、クレイアニメやフィードバック系を使ったグラフィック作りを試していたのは、(比喩としてではなく、物理量としての)違う次元から「動き」について考えてみたかったからなのかなぁ、と今になって思いました。

とか衒学趣味じみたことをダラダラ考えつつ、こういうUIがあれば面白いぞとoFでスケッチしてたのが、上の動画でした。