橋本 麦∿Baku Hashimoto

さよなら不気味の谷

このドキュメンタリーは最高。昨年のMotion Plus Designの時も引用させて頂いた。

「CGだと見破られないのが良いCG」という、CG業界である種公理化されがちな価値観も、あくまで時代のトレンドの一つとして意図的に矮小化していたり、#HYPERREALCGなんかもサラッと紹介されていたりするのがニヤリとする。

個人的な解釈だけど、ここで言う「不気味の谷」は、元来の意味に限らず、CGがそれ以前の写真なりセルアニメなりフィジカルなメディアの再現的な用法に徹する限り立ちはだかる障壁全般を指してるのだと思う。その「谷」を正面切って突破して、より本物っぽくて、リッチで、映画的なルックを目指すのがCGコミュニティのメインストリームだとしたら、谷自体から横道に逸れた先にある「荒野」もまた最高だよねっていう。

そういう意味ではThe Wildernessのチャプターからが本番。真面目なCG技術の発展史の体を成しながら、本当はこっちを紹介したくてしゃーなかったんじゃんってツッコミたくなる熱量。文脈化はされずともやっぱり世界のどこかでこういう流れが無性に気になって追っていた人が、自分以外にも居たんだって嬉しくなった。その分ミームに乗っかった安易なものも多いけれど。

MPDにWeirdcoreJonathan ZawadaDirk Koyが出たら最高なんて話をスタッフのHu Yuとその彼氏のStevenと冗談で話していた。(ゴリゴリ映画っぽいものに憧れてCGやってる人でも結構みんな知ってるのが面白い)なんかそういうこの映像中の言葉でいうところのCGI Experimentalismっぽい人達を、音楽カルチャーに付随したビジュアルアーティストとしてでなく、思い切りテクニカルな目線から紹介する感じのやつもっと見たい。なんなら自分でやりたい。

コメント追記

国内の身近なところでも映像業界の人達が選ぶ映像アワードで山形一生さんの作品が選ばれていたり、谷口暁彦さんやノガミのビデオがさらっとStaff Picksに選ばれていたりするとか気になっていた。賞というものに対するシニシズムはさておき。

一流プロダクションの超絶オシャ映像でも8年後には、そうかぁ…この頃はアンビエント・オクルージョンが入るだけでめちゃリッチな時代だったんよなぁ…と受け止められてしまう感覚っていうのはCG技術が成熟期に入らない限りあり続ける気がする。

そんな中でCGだとか映像文化の中でナウくありつづけることへの刹那さを、メディアアート的視点で相対化・異化してくれることをコミュニティもどこかで欲しているのだろうか、とか思った。