Baku Hashimoto

橋本 麦

「究極の登校」最優秀賞受賞に関して思うこと

母校の放送部のWebサイトに書いたテレドキュ最優秀について思う事(2010年7月25日)の転載。部で制作した「究極の登校」というドキュメンタリー番組が、NHK高校放送コンテスト(通称: Nコン)で500近い応募作品の中で最優秀賞を頂いた時に、書き残していたテキストです。ツッコミどころ満載ですが、高校生ということに免じて許して貰えれば。これも、いつか参照したくなる時が来るはず。


おしらせでも書きましたが、僕たちの制作したテレビドキュメント「究極の登校」がNコン最優秀を頂きました。やっぱり嬉しいといえば嬉しいのですが、逆にこの番組の為に他の524校が涙をのんだ事を考えると、本当に最優秀をもらって良いのかなと思ってしまいます。

この番組を作るにあたって根底にあったのは、実は「会場の放送局員を飽きさせない」ことでした。一般視聴者の方々にメッセージを伝える事でも感動を与えることでもありません。

というのは全道大会や全国大会は1日に40作品近くが放映されます。素晴らしい番組、たくさんあります。だけど、ぶっちゃけ何時間も観るのってどんなに面白い作品であっても、大変だと思うんです。別に作品が暇だと言いたいワケではありません。ただ、その中で会場の目を覚めさせるようなヘンな作品を流せたら面白いよね。そんな意図を持って制作をしてきました。

また、番組に込めたメッセージは、実は他校の放送局員に向けてのものです。これは凄く意見が分かれる所なのですが、大会が作品に求める「高校生らしさ」って色んな形があると思うんです。社会に向けて高校生視点で糾弾していく姿勢、高校生にしか知らない意外な事実を明らかにすること、高校生ならではの柔軟な発想などなど。僕はその中に「おもいっきし真面目に馬鹿やってみる」も入ったって良いじゃないか、と思います。

僕たちの放送局が以前制作した番組を一般生徒に見せた事があります。そのときの感想が「なんか寒気した」でした。その時はかなりショックを受けましたが、次第にこう思えてきたのです。僕たちはNコンの作品を何十本も観ているから「Nコンの文法」に麻痺しているのではないかって。「私たちは●●する事がこれからの社会には求められているのです」的なまとめ、僕は当然の如く使ってきました。だけど、一般生徒はそういう建前的な部分がウザく感じる。

目が覚めたような気がしました。今の僕には本気で社会に糾弾したい事がありません。確かにやろうと思えば社会格差、履修問題、戦争、他校の方々ほど上手くは出来ないにしろ、作ります。だけど色んな方々のお話や見識を、そんな僕の脳内フィルターを通して番組という型に仕上げても、所詮表面を撫でるだけで終わってしまうのかなぁと思ったんです。そんなの、取材に協力してくださった方に対して失礼ですし、観ている人はそのボロに絶対に気付きます。だから敢えて、社会的なメッセージ抜きにしてこのようなテーマにしたのです。こういうやり方だって、「高校生らしさ」の一つでは無いかという提案として。

勿論馬鹿をすることが「らしさ」の全てだと言うわけではありません。だけど、もっとやりたい事やっても良いじゃないかって。建前じゃなく、本気で興味を持った事を突き詰めてみるのも良いじゃないかって。自己満足だとか賞を取る為にやるのではありません。ただ、この人生で最もクリエーティブな(?)時期だからこそ、もっと自由な事をしてもいいんじゃないかって思うんです。

だからノンフィクションであるドキュメンタリーらしからぬって言われても反論はできません。ノンフィクションの中の事実を伝える事が本意では無かったのですから…。ただ、その為に交通管制センターの方の「街を裏で支えている仕組みについて多くの人に知ってほしい。」という言葉や、スポーツ医学博士や健康運動指導士の方の「毎日の登校を通して『歩く』という行動が健康にもたらす利点と、その大切さを感じて欲しい。」というメッセージを十分に伝えられなかったということは後悔しています…。勿論調査内容に偽りはありませんが。

あと、今回多用したCGについてです。僕は映画や音楽のPVが大好きでした。じゃあ、あのカッコいい映像、作ろう!って。(短絡的な思考ですね)CGは見映えがするので邪道だ、という声もあります。テクニックに走っているのではないか、と。だけど僕は、CGは作品を面白くする数多くの手法の一つに過ぎないと考えています。ウケを狙いに行ったネタ、効果音、画面構成。様々な要素の中から、敢えて「高校生には難しい、しかもメチャメチャ時間がかかる」CGを選択してみました。もちろん誰も使い方を知らない放置状態のソフトを使いこなす為に相当な時間をかけました。んなことしてる暇あるんだったら他の手法で面白がらせた方が手っ取り早いですよね。

間違いなく遠回りな選択でした。しかし、CGだからこそ表現できる真新しさや斬新さ、カッコよさを観て頂きたいなと思ったのです。CGという技術に逃げたつもりはありません。

本当に他校の面白い、そして素晴らしい作品を押しのけて評価されて良いのかという気持ちもあります。以前人追いドキュメントを作った事がある僕には、取材対象者のさりげない本音を引き出すのにどれだけの取材努力が必要か痛い程分かります。だからこそその努力に負けないように僕たちも3ヶ月という短い期間で頑張って来たつもりです!今回最優秀という賞を頂きましたが、それはたまたま自分たちの作品が評価されたことに過ぎません。3年連続で問題解決型ドキュメントが最優秀を頂いている中で、来年もっとこういった調査系が増える事は必死(?)ですが、僕はあくまでも「自分達が観て面白いと思える」作品づくりをすべきだと思います。それがたまたま人追い、モノ追い、或は問題解決型になるという、それだけの話。顧問のお言葉を借りるとすれば、そういう本気で作った作品には自ずと結果がついてきます。絶対に「こういうのがウケる」「賞狙える」という思考ありきになってはいけないと思います。

言いたいだけ書いてしまいましたが(タイピングの早さだけは自慢です)、あくまでも一高校生のちょびっと捻くれた意見として受け取ってください。本当にNコン、最高でした!